FSCの原則と基準
原則1 法律とFSCの原則の遵守
森林管理は、その国のすべての森林関連法およびその国が加盟する全ての国際条約と国際的取 り決めを遵守するとともに、FSCの原則と規準に沿うものであること。

1.1: 森林管理は、全ての国内法、地域の法律および行政の要求事項に従わなければならない。
1.2: 関連する法的に規定された料金、ローヤリティ、税そして他の費用は、全て支払わなければならない。
1.3: CITES、ILO 条約、ITTA、生物多様性条約等の国際的取り決めへの加盟国は、それらで規定されているすべての事項に従わなければならない。
1.4: 法律および規則と「FSCの原則と規準」とが整合しない場合は、認証制度の目的に沿い、各場合に応じ、認証機関及び関連組織により評価されなければならない。
1.5: 森林管理地域は、不法伐採、移住(/定住)、そして他の無許可の行為から保護されなければならない。
1.6: 森林管理者は、「FSCの原則と規準」を長期にわたり厳守することを立証しなければならない。
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原則2 保有権、使用権および責務
土地や森林資源に対する長期にわたる保有や使用の権利は、明確に規定されるとともに文書化され、また法的に確立されること。

2.1: 対象となる土地を長期にわたり森林として使用する権利(土地の所有権、慣習上の権利、賃貸契約など)が明確に立証されていなければならない。
2.2: 法的、慣習的保有権あるいは使用権を有する地域社会が、地域社会の権利あるいは資源を保全するために、森林施業を継続して統御できなければならない。ただし、地域社会が、自由意志により、情報に基づいた同意を行なった上で、管理を他の機関に委託した場合を除く。
2.3: 保有権に関しての主張や使用権に関する論争を解決するため、適切な手段が整備されていなければならない。認証評価の際には、あらゆる未解決論争についての詳細や状況が全て考慮に入れられる。重大な利害関係を含む重要な論争が未解決の場合、通常、管理に関する認証は不適確とされる。
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原則3 先住民の権利
先住民が、彼らの土地やテリトリー、資源を所有、利用、そして管理する法的及び慣習的権利が認められ、尊重されること。

3.1: 先住民の土地やテリトリーについては、先住民が森林管理の統御を行えるものとする。
ただし、先住民が、自由意志により、情報に基づいた同意をしたうえで、管理を他の機関に委託している場合を除く。
3.2: 森林管理は、直接的あるいは間接的を問わず、先住民の資源もしくは保有権を脅かしてはならないとともに縮小してもならない。
3.3: 先住民にとり、文化的、生態的、経済的あるいは宗教的に重要な意味を持つ特別な土地に関しては、先住民との間で明確に確認されなければならない。また、森林管理者はこれを承認するとともに、保護しなければならない。
3.4: 先住民は、彼等が持つ森林に生息する種の利用方法や、森林の管理方法に関する伝統的な知識が使用された場合には、それらについての代償を受けなければならない。この代償については、森林管理を開始する以前に、先住民の、自由意志による、情報に基づいた正式な同意を得なければならない。
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原則4 地域社会との関係と労働者の権利
森林管理は、林業に従事するものと地域社会が、長期にわたり社会的、そして経済的に十分な 便益を得られる状態を継続、あるいは高めるものであること。

4.1: 森林管理区域内の地域社会、もしくは隣接する地域社会に、雇用、訓練そして他のサービスを受ける機会が与えられなけれぱならない。
4.2: 森林管理は、労働者やその家族の健康や安全に関する全ての関連法律や関連規則を満たすものでなければならない。
4.3: 労働組合を組織し、雇用主との自発的な交渉を行う労働者の権利は、ILO条約第87、98 で概説されているように、保証されなければならない。
4.4: 管理計画や管理方法は、社会的な影響に関する評価結果に配慮がなされなければならない。森林管理により直接影響を受ける人々やグループとの協議は継続して行なわなければならない。
4.5: 法的あるいは慣習的な権利、財産、資源、地域住民の所有する家畜などに対し損害を与えた場合における、苦情の処理及び公平な補償が行なえるよう適切な方法が整備されていなければならない。このような損害を回避する手段がとられなければならない。
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原則5 森林のもたらす便益
森林管理は、経済的な継続性と、環境や社会が享受しているさまざまな便益とを確保できるよ う、森林から得られる多様な生産物やサービスの効果的な利用を促進するものであること。

5.1: 森林管理は、経済的に継続できるように努力されなければならない。またその一方で、生産にかかる全ての環境、社会そして管理費用に配慮するとともに、森林の生態学的な生産性を維持するために必要な投資が確実に行なわれなければならない。
5.2: 森林管理と流通事業は、森林がもたらす多様な生産物を最大限に活用するとともに、地域での生産物の加工を推奨するものでなければならない。
5.3: 森林管理は、伐採や現場での加工作業に伴う廃材を最小限に抑え、他の森林資源へのダメージを避けるものでなければならない。
5.4: 森林管理は、地域経済の強化と多様化に努め、一つの林産物のみに依存することを避けなければならない。
5.5: 森林施業は、森林のもたらす水資源や漁場などのサービス及び価値を、認識し、維持し、高めていくものでなければならない。
5.6: 林産物収穫は、永久に持続的であるレベルを超えてはならない。
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原則6 環境への影響
森林管理は、生物の多様性とそれに付随する価値、水資源、土壌、そしてかけがえのない、しかも壊れやすい生態系や景観を保全し、生態学的な機能や森林の健全さを維持するものであること。

6.1: 環境へ与える影響の評価は、森林管理の規模や内容、影響を受ける資源の特異性に応じ徹底して行なわれなければならないとともに、管理システムの中に十分に組み込まれていなければならない。評価は、現場での加工施設により生ずる影響に配慮するとともに、景観レベルでの影響にも配慮なされなければならない。環境への影響は、現場での作業が行なわれる前に評価されなければならない。
6.2: 希少種、危急種、絶滅危惧種及びその生息地(例えば、営巣地や採餌場所など)を保護する手段がとられなければならない。保全地域及び自然保護区は、森林管理の規模や内容、影響を受ける資源の特異性に応じて確立されなければならない。不適切な狩猟、釣り、仕掛け罠、採集は取り締まらなければならない。
6.3: 生態学的機能や価値は、以下に記載するものを含め、現状が維持されるとともに高められ、あるいは復元されなければならない。
a)森林の更新と遷移
b)遺伝子、生物種、生態系の多様性
c)森林生態系の生産性に影響を及ぼす自然サイクル
6.4: その景観に含まれる現存する代表的な生態系は、森林管理の規模や内容、影響を受ける資源の特異性に応じ、自然のままの状態で保全されるとともに、地図上に示されなければならない。
6.5: 下記の事項を守るためのガイドラインが文書化され、実行されなければならない。
・浸蝕の抑制
・伐採時での森林損傷、道路建設、そして他の全ての機械による被害を最小限のものとすること
・水資源の保全
6.6: 管理システムは、環境に配慮した非化学的な病虫害への対処方法を開発し取り入れていくとともに、化学的農薬の使用を避けるよう努めなければならない。世界保健機構で規定されているタイプ1A、1B 及び塩素系炭化水素農薬(chlorinated hydrocarbon pesticides)は、残留性が高く有毒であるとともに、その誘導物質(derivatives)は生物的に活性化し続け使用目的をはるかに超えて食物連鎖の過程で蓄積するので、国際条約により禁止されている農薬同様、使用が禁止されなければならない。化学物質を使用する際は、健康と環境に及ぼすリスクを最小限に留めるため、適切な設備と訓練とが整備されていなければならない。
6.7: 化学薬品、容器、燃料や油を含む液体、固体の非有機廃棄物は、環境に配慮した適切な方法で管理地域以外の場所に処理されなければならない。
6.8: 生物的防除を利用する場合は、その方法が文書化されるとともに、その利用は最小限に留められ、監視されなければならないとともに、国内法及びや国際的に認められた科学的取り決めに従い厳しく管理されなければならない。なお、遺伝子学的に生命体を変化させることは禁止されなければならない。
6.9: 外来種の利用は、生態系への悪影響を避けるため、慎重に管理され、頻繁に監視されなければならない。
6.10: 森林を植林や他の土地利用へ転換させてはならない。但し、下記の場合を除く:
a)森林管理区域のごく限られた範囲で行われる場合
b)保護価値の高い森林区域が除かれている場合
c)森林管理区域において、長期的な保護による恩恵が、明らかに、十分に、より一層そして確実にもたらされる場合
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原則7 管理計画
森林管理は、その国のすべての森林関連法およびその国が加盟する全ての国際条約と国際的取 り決めを遵守するとともに、FSCの原則と規準に沿うものであること。

7.1:

管理計画及びその支持文書(supporting documents)では、以下のことについて触れなければならない。
a)管理目的。
b)管理対象となる森林資源、環境に関する制限、土地利用と所有状況、社会経済的状況、隣接地の概略についての記載。
c)当該森林の生態及び自然資源調査により収集された情報に基づく、育林あるいは他の管理システムについての記載。
d)年間伐採量及び樹種選択の理論的根拠。
e)森林の成長及び動態に関するモニタリングを行なうにあたっての規定。
f)環境評価に基づく環境保護方法。
g)希少種、危急種及び絶滅危惧種の同定と保護に関する計画。
h)保護地域、管理計画、土地所有形態を含む森林資源に関する基本情報が記載された地図。
i)導入される伐採技術と設備についての記載とその事由。

7.2: 管理計画は、環境、社会、経済状況の変化に対応するとともに、モニタリング結果、あるいは最新の科学的知見・技術情報に配慮し、定期的に改訂されなければならない。
7.3: 林業従事者は、管理計画を確実に実行するにあたり、適切な訓練と指導を受けなければならない。
7.4: 情報の秘密性を尊重する一方、森林管理者は、規準7.1で挙げたような事項を含む管理計画についての基本的事項の概要を公開しなければならない。
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原則8 モニタリングと評価
森林管理の規模と内容に応じた適切なモニタリングが、森林の状態、林産物の生産量、生産・加工・流通各段階、管理作業およびそれらが社会や環境に与える影響を評価するために行なわれること。

8.1: モニタリングの頻度とその内容は、影響を受ける環境の相対的な複雑性や脆弱性とともに、森林施業の規模と内容に配慮して決定されるものとする。モニタリング方法は、結果が比較でき、変化が評価できるように、首尾一貫しているとともに反復できるものでなければならない。
8.2:

森林管理は、少なくとも以下に示すような、モニタリングに必要な調査とデータ収集を含むものとする。
a) 収穫された全ての林産物の生産量

b) 森林の成長、更新及び森林の状態

c) 動植物の構成状態と観測された変化

d) 収穫及び他の作業により生じる環境と社会への影響

e) 森林管理にかかる費用、森林管理の生産性その効率性

8.3: モニタリング、および認証を行なう機関が各々の林産物をその起源から追跡すること -“生産・流通・加工("chain of custody")過程”として知られている- が可能となるような文書が森林管理者により作成されなければならない。
8.4: モニタリング結果は、管理計画の実行及び改訂に反映されなければならない。
8.5: 情報の秘密性を尊重する一方、森林管理者は、規準8.2 で挙げたような事項を含む指標のモニタリング結果についての概要を公開しなければならない。
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原則9 保護価値の高い森林の保存
保護価値の高い森林の管理は、その森林の特質を維持、または高めるものでなければならない。保護価値の高い森林に関する決定は、常に慎重に行われなければならない。

9.1: 保護価値の高い森林の特質を判断する際、森林管理の規模および内容に応じた評価が不備なく行われるものとする。
9.2: 認証過程においては、認められる保護特質、およびその維持のための諸手法についての協議が重点的になされなければならない。
9.3: 管理計画は、特質が確実に維持され高められるよう、慎重な措置を盛り込むとともに、実施されなければならない。この措置は、公開される管理計画概要に具体的に明示されなければならない。
9.4: 年一度のモニタリングが実施され、保護特質が維持され高めるように取られている措置が効果的なものであるかどうかが評価されなければならない。
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原則10 植林
植林は、原則の1から9及び原則10 とその規準とに従って計画および管理されるものとする。植林は、社会的、そして経済的便益を提供し、世界の林産物需要を満たすとともに、天然林の管理を補助し、天然林への利用圧を軽減し、その復元および保全を推進するものであること。

10.1: 天然林の保全及び復元の目的を含む植林の管理目的が、管理計画に明確に述べられるとともに、それが確実に実行されなければならない。
10.2: 植林の計画と配置は、天然林の保護、復元そして保全を促進するものでなければならず、天然林への利用圧を増加するものであってはならない。植林の配置にあたっては、森林施業の規模にあわせ、野生生物のコリドー、河岸地帯、異なった林齢・伐期のモザイク的な配置が採り入れられなければならない。植林区画の規模と配置は、当該する自然景観内で見られる林分パターンと整合したものでなければならない
10.3: 経済的、生態的、社会的安定性を高めるように、植林の構成は多様であることが望まれる。このような多様性には、その景観内での管理区画の規模や配置、種の数と種の遺伝的構成、林齢及び構成があげられる。
10.4: 植林のための樹種の選択は、その場所への総体的な適合性及び管理目的に合致しているかの判断に基づいて行なわれなければならない。生物の多様性をより保全していくためには、植林及び劣化した生態系の復元においては、外来種よりも在来種の方が好ましい。外来種は、在来種の果たす役割を上回るときに限り導入するものとし、導入した場合は、通常ではまれである大量枯損、病虫害の発生及び生態系への悪影響の発生について注意深く監視しなければならない。
10.5: 森林管理区域全体のバランスは、植林の規模に対して適切であるとともに地域の基準により決められるが、その区域が自然状態での森林被覆へと復元されるように管理されなければならない。
10.6: 土壌状態、土壌産出力そして生物学的活動を維持あるいは高めるための手段が講じられなければならない。伐採の技術やその割合、道路の建設と維持管理、そして樹種の選択により、長期的な土壌の劣化、水質・水量への悪影響あるいは流路の大幅な逸脱がもたらされてはならない。 /td>
10.7: 病虫害の発生、火災、あるいは植物の移入を防ぐための手段が講じられなければならない。統合的な病虫害管理が管理計画の基礎部分を形作るものであるが、化学的薬物や化学肥料の使用よりも、先ずは予防を行い生物的防除手段を用いなければならない。苗畑も含め、植林管理では、科学的薬物や化学肥料の使用を極力避けなければならない。化学物質の使用については、規準6.6 と6.7 でも触れられている。
10.8: 施業の規模と多様性により、植林についてのモニタリングには、規準8.6 と4 で扱われている内容に加え、現場内外における潜在的な生態学的、社会的影響(例えば、天然更新、水資源と土壌生産力への影響、地域生活と社会福祉への影響等)についての定期的な評価が含まれなければならない。どのような樹種であっても、その樹種が、その地域に生態学的に適合し、他を侵略するものでもなく、他の生態系に深刻な悪影響を及ぼさないものであるという地域的試験や実績が示されない限り、大規模な植林を行なってはならない。植林のための土地取引きに関する社会的問題、特に土地の所有、利用、アクセスに関する地域住民の権利の保護については、特別の注意を払わなければならない。
10.9: 1994 年11 月以降に天然林から転換された植林は、通常、認証の対象とはならない。植林への転換に関し、森林の管理者/所有者に直接あるいは間接的に責任が無いという十分な証拠が認証機関に提出される場合は、認証の対象となることがある。
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