森に生きるすべての生き物たちに優しく暖かくあり続けたい。

1992年のリオデジャネイロ地球サミットにおいて、人類にとっての緊急、かつ、重大な課題として地球温暖化問題と共に取り上げられ、条約の採択まで行なわれたものに「生物多様性の危機」の問題がありました。
青梅の杜では、生物多様性を、遺伝子レベル、生物の種レベル、生態系レベル、ランドスケープレベルで護っていくことで、「生物多様性条約」の精神を具現化することに早くから取り組んできました。 具体的には、他地域から生物を持ち込まず、青梅固有の生態系を護り、その固有の生態系によって、おのずから生み出される、青梅本来の美しく暖かく何より懐かしい景観の復元を試みようというものです。
例えば、同じ里山という言葉によって定義される景観も、タブやシイなどの照葉樹によって形成される濃密な緑滴る鹿児島の里山と、アカマツやコナラによって形成される京都の繊細で優雅な里山と、ミズナラやブナで形作られた秋田のほのかに暖かな里山とは、それぞれに異なった個性を持ちそれぞれに美しく懐かしく価値あるものです。 それぞれの場所で生育する生き物の組み合わせ、そして人と自然との関わり方の違いによって、この日本は、本当に個性ある多様な景観を保ち続けてきました。
青梅の杜では、生物の不用意な移動はそれら個性的な景観の多様性をも損なう可能性があるとの認識から、他地域からの生物の移動について、21世紀委員会より先駆的に打ち出していただいた指針に沿い、厳格な基準を設けて対応してきました。生物多様性の問題に先駆的に取り組んできたことが、結果として、「青梅の杜」にとっての重要なオリジナリティの一つとなり、また、外部からの評価も、相対的に高くなりつつあります。 一方、地球温暖化の問題では、CO2の重要な吸収源として森林が早くから注目され、最近では、カーボン ニュートラルな、かつ、世界の食糧問題に負荷をかけない燃料として、木質バイオマスが注目されるようになってきました。 青梅の杜でも、森の木々は、CO2の貯蔵庫であるとの認識から、林業作業の過程で伐採した材は、できる限り有効に活用することに取り組んでいます。 豊かな生物多様性の維持・復元、CO2吸収源としての森林の管理、CO2を中に閉じ込めた木材の有効活用を経済的にも持続可能な林業経営の中で実現すること。かつて、里人と森の生き物達が無理なく共生していた里山に活きていた叡智に学び、森林の公益的機能を最大限に引き出し、社会の便益に奉仕すること。 わたしたちの森林管理には様々な目標がありますが、つきつめれば、人を含め、森に生きる全ての生き物たちに優しく暖かくあり続けたい、それが私達の素朴な、けれど大切な想いであります。

千年の樹育成プロジェクト
かつて日本の森林にあたりまえにあった巨樹を再生するプロジェクトです。現在、山林内の調査を行い、巨樹に育成する樹の選定作業を行なっています。単純に保存をするのではなく、文化財の修復等に大径木の材を継続的に供給できる体制の構築を目標としております。
環境NPOベルデとの協働
我々は、青梅の杜を正しくより良く管理していく為には、多くの人々と協力していくことが不可欠であると考えています。 地域住民、行政、地域の森林組合、協力業者、地域の環境保全団体、近隣の林業経営者、教育機関、林業に関する研究者、生態学・生物学等の研究者、方と森林管理者である当社が協働していくことが、杜を護り、健全な林業経営を続けていく上で大きなプラスになると考えています。もちろんそうした理想的な関係は一朝一夕に構築することは容易ではありませんが、ここ青梅の杜に於いては、幸いなことに地域の環境保全団体、環境NPOベルデとの協働が早くから実現しています。
環境NPOベルデは、当森林内の宮ノ平地区の管理を受け持ち、里山文化の再生、創生を目指し、環境教育林「交流・継承・創生の森」作りを行っています。
当社では、市民ボランティアのレベルでは困難で危険を伴う、チェーンソーを使っての伐木、機械を使っての集材等の作業をベルデに代わって作業し、市民ボランティアの安全を護り、活動の進展をサポート、逆に、ベルデが行うきめ細かな植生調査の結果等を当社の森林作業に活用するなど、対等のパートナーシップを結んで活動しています。
ベルデは、間伐材を使って作ったベンチ、テーブルなどを学校、図書館等に寄贈。また、毎年数度、子ども自然体験教室を開いたり、ハイキング道の整備や杜の各種調査を行う、或いは、雪害木や、近隣の山主が処分に困った竹材を炭にして土壌改良に役立てたり、木酢液を生産し、その活用を模索するなど、特に社会貢献や地域社会との融和の面で、多摩農林の活動を補完してくれています。